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​最期の心象風景

私は人間は好きだ。必死に何かを求めて必死に生きて必死に生み出す。現にも目の前の彼が生み出した”何か”にすがりに来た。楽に生かされた私からすればうらやましいものである。

しかし私は人間とかかわるのは嫌いだ。この彼にだって話したくないくらいだ。

私は偉大な企業を仕切る父とその跡継ぎの兄がいる。人付き合いを嫌うのはこいつらのせいだと死の際でおもった。

兄とは腹違いの兄妹だ。私は父が外で作った女との子。母が死んだから引き取られただ

け、みんな私を忌み嫌った。そんな中兄は私を妹として扱った。

普通であれば優しい兄で終わるだろう。大きな企業に生まれてしまったがために彼が信じられなくなる。私が後を継ぐ可能性のある男だったらどうなるか、父への媚ではないのか。幼くひねくれ知のあった私にこの二つは人付き合いを嫌うのに十分だったと思う。

人を疑い人を知ろうとせず人に知られないで生きてきた結果がここだ。

唯一の救いは私が生まれながらに滅んでいく体だったことだろう。

父は私を病院に置くことで世間から隠すことができた。私も最低限のかかわりで生きてこれた。

私はもうすぐ死ぬ。後ろで奇跡だの運命だのほざいている学者へ身を預けることになる。

振り返れば悲しくも楽しくもない人生だった。新たに生まれる私のかけらには別の道を歩んでほしく思う。

​彼に挨拶をできないのが心残りだ。それではさようなら。

​最後に彼女に手紙を書くように頼んだらこれを渡された。自分宛なのか誰でもないのか。

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